りんこま合宿 (三宅版)& 合宿三昧

りんこま合宿 (三宅版)& 合宿三昧

公開日:

2026.5.1

    更新日:

    2026.5.1

      • #音楽

      • #関係性

      • #研究の方法

      三宅 博子

      国立音楽大学教員。日本音楽療法学会認定音楽療法士。兵庫県音楽療法士。「おとむすび・おんがくクラブ」世話人。

      2026年3月14日・15日に、りんこま合宿が鎌倉にて行われました。

       合宿のシリーズ記事、こちらからお読みいただけます。

       りんこま合宿26-3 Linkoma Re-search Camp 26-3(生野版)

       りんこま合宿のご報告~研究テーマについても少し(田原版)
       りんこま合宿 研究についてのディスカッション(伊藤版)

      私にとっては、3月は怒涛の合宿三昧でした。りんこま合宿を皮切りに、3月17・18日に「他者・音楽・研究」会の合宿(大阪)、そして3月28・29日に「おとむすび・おんがくクラブ」の合宿(山梨)に行ってきました。

      私が今取り組んでいる研究テーマは、「障害のある人を含む参加者による協働的音楽活動のアクションリサーチ」です。合宿というちょっと非日常な時間のなかで、それぞれ違う場所で違う人たちと会って、研究のもやもやを共有したりしなかったり…。とても豊かな経験でした(そして疲れました)。その一端を、ここで振り返ります。

      りんこま合宿

      りんこま合宿では、「おとむすび・おんがくクラブ」の参加者と音楽活動場面の映像を見ながら語り合ったインタビューをもとに、文字起こしデータの整理・分析について相談しました。もともとは、メンバーが活動をどう捉えているのかを知りたいという思いから始めたものです。ただ、「インタビュー分析」といっても目的や方法はさまざま。何から手をつければいいのか…と焦るばかりでした。

      そんな中でいただいたのが、語りの何に注目するか? という視点です。①語られた“内容”に注目する ②語り合う“プロセス”に注目する。どちらからも、大切なことが見えてきます。この視点に立つと、たとえば、「参加者それぞれの立場や経験によって、同じ場面の見え方はどう変わるのか」「その違いをどうすり合わせ、音楽の場が形づくられていくのか」といった点にも目が向きます。インタビューは「語られたこと」だけでなく、「ともに語ること」そのものからも多くを教えてくれることを、あらためて感じました。

      「他者・音楽・研究」会の合宿

      「他者・音楽・研究」会は、哲学・音楽学・文化政策・コミュニティ音楽・音楽療法・作曲実践・対話実践など、複数の領域にまたがりながら音楽実践に携わる実践者/研究者による、ちいさな研究会です。「音楽」「他者」「研究」というキーワードをそれぞれ問いなおし、西洋的な制度に馴らされた「音楽」を、人びとが環境とともに生きるための営みとして捉えかえし、言葉にしていくことを目指しています。

      ここでも、りんこま合宿と同じような気づきがありました。場面について語り合うこと自体が、互いに関わり合いながら能動的に社会を動かしていく実践でもあること。また、ひとつの場面をめぐっても立場や経験によって見え方が変わり、つねに別の見え方がひらかれていることです。

      興味深かったのは、「研究会のメンバーそれぞれが音や音楽をどのように認識しているのか」について、これまでの音楽体験を手がかりに対話した時間でした。異なるフィールドで活動する研究会メンバーが「なぜ音を介して他者と関わろうとするのか」という問いを共有し、理解の土台をつくることを意図したものでした。個人的には、この対話を通じて、どちらかといえば社会的関係に向いていた自分の意識が、おんがくクラブの参加者と「どのように音楽しているか」という点へと移り、ふだん半ば無意識に行っている行為の次元が浮かび上がってくるような感覚がありました。

      「おとむすび・おんがくクラブ」の合宿

      おんがくクラブのみんなで合宿に行くのは、4年ぶり2回目。貸切バスに楽器を積んで出発し、古民家に絹糸を張って楽器にして奏でたり(ストリングラフィー)、青空の元で気ままにセッションしたり、古い集落を訪ねたり。現地の人や場所との交流も楽しみました。合宿の様子はこちら

      旅の中ではとくに「研究」について話しませんでしたが、音楽をしている時間はもちろん、移動や滞在のひととき、そこでの何気ない出来事のひとつひとつが、互いの存在や見方にふれていくような感覚がありました。私にとっては、ここで起きている現実そのものが、参加者が直面している課題に向き合いながら関係のなかで応答していく営みであり、アクションリサーチとはこういうことなのかもしれないと、ぼんやり感じました。

      合宿を通して

      こうして振り返ってみると、違う場所や人と共有することで、ひとつの研究テーマに多面的な光が当たり、それが自分の内に少しずつ沈殿していく感覚があります。こうした積み重ねが、研究にオリジナルな陰影を刻んでいくのかもしれないと思いました。