りんこま合宿26-3 Linkoma Re-search Camp 26-3(生野版)

りんこま合宿26-3 Linkoma Re-search Camp 26-3(生野版)

公開日:

2026.3.31

    更新日:

    2026.5.29

      • #研究の方法

      • #研究の伝達

      生野 里花

      お茶の水女子大学基幹研究院研究員。アメリカ音楽療法協会・日本音楽療法学会認定音楽療法士、公認心理師。野花ひととおんがく研究舎主宰。

      研究対話:時空間を共にすること、コラボレーション、 安全な対話環境  Re-search Dialogue: Sharing time and space, Collaboration, Safe dialogue environment

      鎌倉にあるリトリートハウス土筆庵にて、りんこまメンバーの合宿を行いました。プロジェクトを組んで1年、学会や研究会で会う以外はオンラインで対話してきた4人ですが、今回泊まり込みでの対話を組んだのには二つのわけがあります。

      まず、「研究とは別のことでコラボレーション体験をしてみる有用さ」について、以前、ベルゲン大学のSimon Gilbertson先生が話されたことです。

      「コラボレーションという行いについて大事だと思っていることがあります。それは、コラボレーションというと、その相手に会った段階で実際の作業が始まってしまったりしがちですが、できれば、始まる前の状態まで、実際に時間を戻してはどうか、ということです。お互いについてもっと集中的に知り合うワークから始めるということです。私たちは、コラボレーションをとても急いで開始してしまうことが多いのではないでしょうか。お互いの主義、世界観や大事な価値観、お互いの哲学について学び合うことはとても大切です。こういうことを話し合わないまま始めてしまったら、実はそれがまったく異なっているかもしれませんし、そうするとお互いを理解しきれないままになってしまうかもしれません。それには、いろいろなワークを一緒にやってみるのが役に立つと思います。話す、遊ぶ/演奏する、絵を描く、織物をする、ジョークを書く、互いに話しているところを漫画家に描いてもらう、料理して食べる、複雑なテーマを考えるためにおもちゃを使う、あるいは、つくばの宇宙センターから旅に出る仮想計画を立ててみるのはどうでしょうか。クライエントたちといっしょに行くつくばから月への遠足の計画をするわけですが、真剣に何が必要になるか考えてください。みなさんも何かこういったワークを発案してみましょう。こうしたことは、あなたを社会の中へと参加させ直してくれるいろいろな方法です。」(ここのわ音楽臨床研究対話会自主シンポジウム@第21回日本音楽療法学会)

      寝食を共にすることで起きるさまざまな調整ややりとりのほか、意識的に組まれたワークなどを通して、4人はもっと知り合い、それぞれの研究の背景にある実感を分かち合うことができました。ちなみに、ワークは「AI作曲アプリを用いた"りんこま合宿1日目の歌”の協同制作」と、「中世の作者不詳の楽曲Uppon LaMiReのベースを用いた即興アンサンブル」でした。

      もうひとつ、りんこま合宿の動機になったのは、「研究の孤独からの解放と安全な対話環境」です。これは、私が何度か参加してきたノルウェイのグリークリサーチスクール(GRS)から影響を受けています。GRSはノルウェイの5つの芸術系の大学が協同し、年に2回のオープンスクールを行うプロジェクトですが、これらの大学に属していない私のような人も受け入れてくれます。ただし「習う」のではなく、何か自分の研究を持ち込むことが求められます。集まるのは主に修士〜ポスドクの研究者や学生で、完成される前の研究プロセスのオープンなシェアリングやピアアドバイス、先輩研究者のサポートが受けられます。そのときのテーマに合ったキーノートレクチャーやプラクティカルな研究技法の講座なども日程に散りばめられています。特徴は、いわゆる大学内のゼミなどよりも多彩な人・発想に触れられること、集中して数日を共にすることで仲良くなったり話し込んだりするチャンスがたくさんあることですが、何よりも私が好きなのは、その安全でフレンドリーかつサポーティブな対話環境です。主宰者のひとりJill Halsteadは、「研究することは孤独に陥りやすい。とくに、修士から博士の間で道に迷ってしまう人は多い、それをサポートしたいんです」と言っていました。「研究プレゼンテーション」というと、「準備不足」や「突っ込まれる怖さ」が常につきまとい、そこをカバーすることだけに神経を使うことになりがちですが、GRSでは参加者ひとりひとりが自分の声を取り戻し、自分の研究のワクワクや、トボトボを分かち合える空気を全力で作り出してくれていました。

      今回のりんこま合宿はひとりに90分ずつ「自由に使ってください」という時間をもうけました。ひとりの悩みに4人の頭と心(そしてお茶とスナック)を注ぎ込んで話し合う充実した時間でした。

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