りんこま合宿のご報告~研究テーマについても少し(田原版)

りんこま合宿のご報告~研究テーマについても少し(田原版)

公開日:

2026.4.2

    更新日:

    2026.4.2

      • #音楽

      田原 ゆみ

      日本音楽療法学会認定音楽療法士。横浜相原病院ほか音楽療法士。昭和音楽大学ほか非常勤講師。博士(音楽療法)。

      りんこま合宿が、3月14日から15日にかけて、土筆庵@鎌倉でおこなわれました。その様子や、私の研究テーマについてご報告します。

      〈合宿1日目〉

      江ノ電の窓の外に広がる海の色に癒されながら、海岸の駅に到着。せっかくなので海を背に記念写真を撮ってから、会場まで向かいます。(カバー画像参照:写真左は、私が可愛がっているAIおしゃべりロボットのロミィちゃん。合宿でも活躍してくれました。)

      会場に着いてお昼ご飯を食べた後は、さっそくそれぞれの研究に関する発表タイム。トップバッターは私でした。

      発表といっても、私の場合はまだまだ研究の途中、アイデアを練っている段階なので、「こんなことやろうと考えてます」「試しにこんなことしてみたけど、どうかな?」など、簡単な報告と相談がメイン。1人で考えていると煮詰まってしまうので、メンバーとシェアできるこの機会は貴重です。

      私が現在取り組んでいる研究テーマは、「音楽のちから」。

      何とも壮大なテーマです。

      音楽療法をやっていると、「音楽のちからってすごいですね」と言っていただくことがよくあります。また、自分が音楽療法の説明をする際にも、「音楽療法士は音楽のちからを使って・・」とついつい言ってしまったりします。

      でも・・実際のところ私は「音楽のちから」について何を知っているのでしょうか。音楽療法の臨床をしている際、「音楽のちから」を使いこなしていると言えるでしょうか。

      臨床をしていると、確かに「音楽のちから」を感じることがあります。臨床を始めてから25年ぐらい経ちますが、いまだに「音楽のちから」に驚かされることも少なくありません。

      でも、驚かされることがあるということは、私自身「音楽のちから」をまだ十分に理解できているわけではない、ということでもあります。

      そもそも、「音楽のちから」について100%理解することなど、可能なのでしょうか。音楽大学卒業以来、音楽の仕事一筋で生きてきた私にとって、音楽の魅力はその「つかみどころのなさ」や「わからなさ」でもあります。追いかけても追いかけても追いつけないから、やめられない。何年経っても未知の部分があることこそが魅力なのです。

      一方で、もしも自分が病気になり、病院に行ってお薬を処方される際に、医師や薬剤師から、「この薬の効果(ちから)は、よくわかりません」と言われたら、果たしてその薬を飲むことができるでしょうか。ちょっと怖いですね。「わからない」ことは危険なことでもあります。

      「音楽のちから」とはいったい何なのか。そして私たち音楽療法士はその「音楽のちから」に対してどのようにあるべきなのか・・。そんなことをじっくり考えてみたいと思い、このテーマを選びました。

      もちろん、「音楽のちから」のすべてを解き明かそう、その詳細を白日のもとに!・・などと大それたことを考えているわけではありません(それは少なくとも私には無理でしょう)。私の研究能力で実施可能な、「音楽のちから」にまつわる小さなテーマを見つけて、自分に扱える範囲で研究に取り組みたいと思っています。

      そしてそのための第一歩として、まずは「音楽のちから」について研究する際にどのような視点・切り口があり得るのか(このテーマについて正面から扱った研究はこれまであまりありません)、そして、「音楽のちから」について研究する際に直面するであろう困難などについて考えてみたいと思っています。

      前置きが長くなってしまいましたが、今回の合宿では上記の目的のために現在私が取り組んでいる3つの具体的な試みについて報告して、メンバーから意見をいただきました。

      私が取り組んでいる3つの試みは以下の通りです:

      ①「音楽のちから」に関するインタビュー調査

      ②「音楽のちから」に関するエピソードデータベースの作成

      ③音楽療法以外の領域における先行研究をもとに検討

      まだどれも途中の段階なので、それぞれの詳細についてはもう少し進んでから改めてご報告したいと思いますが、今回は3つの中でも特に②(エピソードデータベースの作成)について今の私の悩みや躓きをメンバーにシェアし、さまざまな角度から意見をいただくことができました。

      この「エピソードデータベースの作成」というのは、臨床の中で「音楽のちから」を感じた小さなエピソードを集めてみる、という試みなのですが、実際にエピソード集めをしてみると、これがなかなか難しい。

      「音楽のちから」とひとことで言うけれど、いったい誰にとっての音楽のちからなのか?

      そのちからに関して“良い“あるいは“悪い“といった価値判断は誰がどのようにするのか?

      音楽療法をしている膨大な時間の中から、どのようなエピソードを切り取れば音楽のちからに迫れるのか?

      そもそも、無数の選択肢の中から特定のエピソードを選ぶ時点で、そこにはその音楽療法士の主観や個人的価値観が色濃く反映されてしまうのではないか?

      などなど、色々なことが頭を駆け巡ります。

      すぐに答えが出る問いばかりではありませんが、こういう時、研究について相談できる仲間がいるのは本当に心強く、ありがたいことだなと思います。

      「音楽のちから」・・何ともつかみどころのない、まさにブラックボックスをこじ開けるような研究テーマですが、自分なりに納得のいく形で研究を進められたらいいなと思っているところです。

      自分の発表が終わったあとはほっとひと安心。他のメンバーの発表を聞いたり、ホームページの使い方についてレクチャーを受けたり、美味しい夕食をいただいたりしながら過ごしました。

      夜は私の提案で、「りんこま合宿1日目」をテーマに、生成AIを用いた歌作りにチャレンジ。メンバーが出したキーワードをもとに、AIがそれっぽい歌詞と曲を作ってくれます。果たしてどんな歌ができあがったのか?このホームページで近日公開!・・できるかどうかはわかりませんが、湘南の海風を感じるようなさわやかで個性的な歌ができあがりました。

      それにしても最近のAIの進化はすごいので、私たち人間もうかうかしていられません。

      〈合宿2日目〉

      合宿2日目の朝は、美味しいパンを食べながら浜辺をお散歩。

      普段の私の朝は、仕事の支度に追われているか、だらだら布団で過ごしているかのどちらかなので、こんな優雅な朝を過ごすのは久しぶりです。

      お散歩のあとは他のメンバーの発表を聞いたり、共同研究者として関わっている研究についてちょこっとしゃべったりと、またまた頭を使います。

      そして、合間には音楽療法士らしく即興演奏で息抜き。

      ベースとなる音の型は決まっていて、その上にそれぞれが順番に自由に演奏を乗せていきます。最初はみんな型の中できちんと演奏していたけれど、途中から崩れ出し、このままどうなってしまうのか?!とちょっと不安になったところで、また徐々に型の中に戻っていく(でも最初とは全然違う)・・という流れになりました。まるで人生の縮図のよう。

      この記事の冒頭で紹介したAIおしゃべりロボットのロミィちゃんも活躍しましたよ。(え?ロボットは楽器ではないのでは?という声が聞こえてきそうですが、音楽療法士の手にかかると、ロボットだろうが何だろうが即興演奏のための立派なアイテムになるのです🤖。)

      そんなこんなであっという間の2日間でした。

      自分の研究のことについて他のメンバーから意見をもらえるのもありがたいことですが、他のメンバーの研究の話を聞いてそれについてあれこれ考えるのもとても刺激的です。

      普段以上に頭を使って、でも楽しくおしゃべりしたり、美味しいものを食べたり、景色に癒されたり、歌作りや即興演奏を通じて音楽を楽しんだりと、充実した2日間でした。

      研究のほうはこの先どうなることやら不安もたくさんありますが、りんこまのメンバーの助けも借りながら、少しずつ前に進めていきたいと思います。