音楽療法同行インタビュー研究への道 その2 (伊藤)

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#プロセスとしての時間
#関係性
#研究の主体
伊藤 孝子
名古屋芸術大学教員。日本音楽療法学会認定音楽療法士。音楽療法グループ「マイエ」代表。
さて、前回の記事では、「音楽療法士の一日についていく研究がしたい」という、私の思いつきにも近い発想から、「同行インタビュー(Go-Along Interview)」という研究方法がすでに存在することを知った経緯をご紹介しました。
今回は、同行インタビューを用いた研究をいくつか読んでみて、その特徴や可能性について簡単に紹介しつつ、私なりに考えたことを書いてみたいと思います。
主に参考にした文献
猿橋順子(2024)「国フェスにおける真正性と関係形成―タイフェスティバル東京2023を事例として―」『異文化コミュニケーション研究』第36号,57-76.
方法について
いくつかの文献を読んでみると、同行インタビューには「これが正解」という決まったやり方があるわけではなさそうです。
車で移動しながら話を聴いたり、散歩をしながら話したり、電車に乗ったり、ある活動に一緒に参加したり。研究の目的や参加者の状況に応じて、さまざまな形で行われています。
ただ、多くの研究に共通しているのは、参加者に普段の生活環境や活動の場を案内してもらいながら話を聴く、という点です。Carpiano(2009)は、これを研究者が参加者の生活世界を案内されながら歩く(walked through)ことだと表現しています。
この案内してもらうということが、単なるインタビューの方法以上の意味を持っているとのこと。通常のインタビューでは、研究者が主導で質問をして参加者が答える、という関係になりがちです。しかし同行インタビューでは、どこへ行くのか、何を見るのか、何について話すのかを参加者が自然に導いていきます。
そのため、研究者と参加者の力関係の偏りが少なくなり(Carpiano, 2009)、研究者もまた外から観察する人ではなく、その場をともに経験する仲間の一人として関わることになります。そして参加者は、研究者と一緒に知識をつくり上げていく存在として位置づけられます(Harvey, 2024)。
このような立ち位置は、私自身の実践的・研究的な関心とも重なる部分が多く、ますますこの方法への興味が高まりました。Harvey(2024)によれば、同行インタビューはデータ収集のプロセスを民主化する方法の一つとして捉えられており、その点ではアクションリサーチの一部とも言えそうです。
2025年9月にりんこまメンバーと行った自主シンポジウムでは、「参加者とともにその日のセッションを振り返る」という実践について発表しました。
参加者とともに音楽療法プロセスを振り返る ❙ 第25回日本音楽療法学会シンポジウム
音楽療法士が一方的にセッションを評価したり解釈したりするのではなく、参加者とともに振り返り、その体験の意味を探っていく。そのことによって音楽療法実践について新しい発見が得られるかもしれない、という期待はもちろんあります。
ただ、私自身は以前から、専門家が答えを出すのではなく、当事者と一緒に考えていくような取り組みに惹かれてきました。
今回の同行インタビューは対象も方法も違います。でも、研究者が一方的に話を聞くのではなく、参加者と一緒に見たり考えたりするという点で、通じるものがあるように感じています。
実際にやってみたら全然違うのかもしれませんが、新しい方法に挑戦することで試行錯誤してみたい。そんな風に考えています。
次回へつづく・・・