水面下の研究プロジェクトLinkoma's Under-the-Radar Research Project

水面下の研究プロジェクトLinkoma's Under-the-Radar Research Project

公開日:

2026.5.29

    更新日:

    2026.6.4

      • #研究の伝達

      生野 里花

      お茶の水女子大学基幹研究院研究員。アメリカ音楽療法協会・日本音楽療法学会認定音楽療法士、公認心理師。野花ひととおんがく研究舎主宰。

      りんこまメンバーの関心や実践はそれぞれ。でもお互いにつながって、アドバイスし合い、励まし合い、こんなプロジェクトを水面下で模索しています。

      (生野)
      「日本の音楽療法士の内的職業アイデンティティ"変わることにひらく”に関する質的研究」
      音楽療法士の職業アイデンティティに関する前研究(生野; 田原(2025))の理論化、及び前研究を題材として行なった研究対話のコード分析を進め、「変わることにひらく」という上位概念を見出した。これを「社会的アイデンティティ」「領域的アイデンティティ」に対して「内的アイデンティティ」と名付け、世界音楽療法大会(イタリア)にて口頭発表する

      「音楽療法プロセス研究のコミュニケーションに関する実験的試み」
      一般に、研究の「プレゼンテーション」においては、論理的厳格さと結論の強度の優先が前提となる。しかしそれはしばしば臨床参加者(セラピストやクライエント)としてのオーディエンスを身構えさせ、切り離す。そして研究者は孤独に陥る。質的研究というのは本来、オーディエンスが、自己の体験への積極的な関連づけによって洞察を得ることを重視する方法である。「正しさ」の境界線から視点をずらし、オーディエンスの等身大の問いや洞察に「コミュニケーション」する方法はないだろうか。そう考えて、ある高齢者の質的事例研究をもとに、「詩」「二人称に向けた語り」「影絵の制作」「対話会」などを行ってきた。さらに、「"代弁的語り直し"による多角的独白体を用いた方法の検討」の成果著作物をWood, S. 編”Trust in Music(仮題)”にてRoutledgeより出版予定である。

      (田原)
      「音楽療法における”音楽のちから”」を研究テーマに掲げ、現在は以下の2つの研究に取り組み中。

      「音楽療法における"音楽のちから”に関するインタビュー調査」
      音楽療法の臨床において“音楽のちから”を感じたエピソードや、“音楽のちから”に関するあれこれについて、音楽療法士にインタビュー中。博士論文執筆の際に勉強したグラウンデッド・セオリーの研究方法にヒントを得て、「広い話題からデータ収集を始め、データ収集と分析を同時進行で進めながら徐々に焦点を絞っていく」方法を実践している。

      「音楽療法エピソードデータの収集とAIを活用した分析の試み」
      上記のインタビュー調査から示唆を得て、新たな試みとして着手し始めたところ。音楽療法実践において印象に残った“ちょっとしたエピソード”を音楽療法士から収集し、その結果を分析することで、新たな視点から“音楽のちから”について検討したいと考えている。また、“音楽のちから”という研究テーマは個々の音楽療法士の音楽療法観とも深く結びついており、自分自身も一人の音楽療法士として自分の持つ価値観の影響を強く受けていることから、この研究では自分の個人的な価値観が前面に出ないよう、AIを活用した分析に挑戦したいと考えている。

      (三宅)
      「知的障害当事者を含む参加者による協働的音楽活動のアクションリサーチ」

      参加者と音楽活動場面を見ながら語り合った内容を分析解釈し、音楽活動の意味や価値の協働構築のプロセスを明らかにする。また、メンバーとの中間評価において社会的参加の意義が見直された過程をもとに、世界音楽療法大会(イタリア)にて口頭発表を行う。以上を通じて、参加者との協働による研究方法論の実際について検討する。

      伊藤
      「音楽療法の”専門性”や“対価が支払われる時間”の外にあるものを探る」。

      2025年度の自主シンポジウムで取り上げた事例(振り返り作業をクライエントとともに行う試み)について、その後の展開を異なる角度から分析する。

      「Go-along research の手法を応用した調査」
      音楽療法士の専門性を語る際に周縁化されやすい、音楽療法実践の時間枠外に着目した調査。