音楽療法臨床プロセスと音楽療法士の「当事者性」に関する論文:平易語抄録(生野)

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生野 里花
お茶の水女子大学基幹研究院研究員。アメリカ音楽療法協会・日本音楽療法学会認定音楽療法士、公認心理師。野花ひととおんがく研究舎主宰。
生野里花(2025).音楽療法臨床プロセスと音楽療法士の「当事者性」――臨床事象の渦中で二人称的かかわりをする立場をどう活かすか .質的心理学フォーラム Vol.17 Ikuno, R(2025). Music Therapy Clinical Process Research and Personal Involvement (Tojisha-ness) : Making Use of the Standpoint of a Second-person Approach in the Midst of Clinical Events .Qualitative Psychology Forum Vol. 17
これは平易語による要約 Plain Summaryです。オリジナル論文はこちらからどうぞ。
音楽療法は、療法をする人(音楽療法士)が、療法をしてもらう人(対象者)を外から見て「ケア」するセッションをし、良い方向に変えていこうとするものだと思われがちです。でもこの論文では、音楽療法をする人もされる人も、実際にはセッションの渦の中の人(当事者)であるという考えを述べます。まずその理由を三つ挙げます。一つ目に、音楽療法士は、音楽を通して目の前の人に自分の身を置きかえ、「あなた」として特別に心を通わせるので(「二人称的アプローチ」)、ここですでに渦に巻き込まれています。二つ目に、「ケア」は、する・されるというより、その場で互いの力を合わせて作っていくものだという見方をたくさんの研究者が言うようになりました。音楽療法の一部はそのひとつだと考えます。三つ目に、最初は音楽療法士と対象者という名前で会っても、音楽の最中は、ただの人間どうしにシフトしている瞬間がよくあります。
さて、音楽療法がどんなものなのかを調べる(研究する)には、外側から見えることや(客観)、最後に出てきたこと(結果)を見るだけでなく、実際に起きている時間の内側の進み方(プロセス)を詳しく知るのが大切です。なぜかというと、音楽療法を受けている人は、その時間が大事だからこそやってきて、その時に自分の身に起きたことを積み重ねていくものだからです。こうした研究には、先ほど言った「音楽療法士も対象者もセッションの渦の中の人」という特徴が活かせるのではないでしょうか。そこでは、音楽療法士が渦中での出来事を感じ取るだけでなく、自分の心が揺れ動いたり、思わなかったような行動をとったりすることも、大事な資料になります。もちろん、揺れ動くままになるのではなく、自分の心が動いていることをもう一人の自分が捉えるというやり方です。そしてそれをしっかり書き留めておきます。
最後に、この考えをもとに試してみた研究のやり方をひとつ紹介します。それは、言葉を使うインタビューではうまく言い表せないセッションの参加者がその時間に何を感じているのかを、「あなたに身を置き換えて」一緒に活動した音楽療法士が感じ取り、代わりに書く方法です。音楽療法士も渦の中にいる(当事者である)ことを活かした方法です。これが、今、皆が知っているような研究の方法の規則に合うかどうかはわかりませんが、研究において「外側から見たこと」と「内側で見たこと」の両方を大事するきっかけにしたいと考えます。
〜これは平易語による要約 Plain Summaryです。オリジナル論文はこちらからどうぞ。